このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
巨額のz&Aに頼らず、自らの力で会社の姿を変えた(ソニーグループ)
1.ソニーは00年代以降、ハードとソフトの融合で競合に後れを取り、スマートフォンを筆頭に伸びる市場を逃し続けた。ドローンや電気自動車(EV)では、同じ歴史を繰り返せない。AirPeak(ソニーグループが開発したドローン)は、たとえ後発でも最新技術のど真ん中で戦うというソニーの意思の象徴といえるだろう。
2.こうした新たな領域に挑戦できるのは、ソニーが業績面で完全復活を果たしたからだ。21年3月期の連結純利益は前の期比2倍の1兆1717億円となり、初めて1兆円を超えた。国内で長年ライバルと見なされてきたパナソニック(1650億円)の7倍の水準だ。株式時価総額は約13兆2400億円(6月18日)と、電機大手8社で唯一10兆円を超え、一人勝ちと言える状態だ。
3.どん底からの復活劇の立役者は2人の経営トップ、つまり前任の平井一夫氏と現任の吉田憲一郎氏だ。早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、「平井氏の時代から”感動を生む企業”というビジョンを掲げることで存在意義を明確化した。この戦略は吉田氏にも受け継がれている」と指摘する。特筆すべきは、巨額のM&A(合併・買収)に頼らず、自らの力で会社の姿をつくり変えたことだ。
(参考:「日経ビジネス」2021年6月28日号)