このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
カーボンニュートラルは「逆産業革命」 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長、6月より東京電力会長)
1.「逆産業革命」とも言えるカーボンニュートラルの奔流(ほんりゅう)が社会に押し寄せている、2030年に向けた温暖化ガスの排出目標について、日本は13年度比46%減と高い目標を掲げた。地球温暖化は、パンデミックと同じかそれ以上にグローバルアジェンダとして解決すべき問題だ。利便性や経済を優先して人間が滅んでは元も子もない。こうした切迫感で世界の足並みがそろったこと自体は大いに結構だ。
2.しかし目標達成までの道のりは平たんではない。石炭や石油など化石燃料を使った安価な経済インフラの享受(きょうじゅ)で成り立ってきた豊かな暮らしの変化を覚悟する必要がありそうだ。それほどの大きなマインドリセットが国民一人ひとりにも求められるのではないか。カーボンニュートラルは科学や物理の法則、経済合理性から従来は当然だった「常識」をひっくり返す作業だ。
3.車や飛行機で人々は自由に移動し、機械を使う工場が消費社会を支えた。いずれも化石燃料を大量消費する。だが地球環境が破壊され二酸化炭素(CO2)排出削減は待ったなし。産業革命から200年近く共にした、化石資源をよりどころとする価値観、技術のベクトルを逆転させなければならない。
(参考:「日経ビジネス」2021年5月31日号)