このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
経営者は俯瞰する目をたえず養っていく努力をする 岩田彰一郎(アスクル創業者)
1.経営には「百の落とし穴」が待ち受けています。私自身、数多くの落とし穴に直面してきました。最も記憶に残るのは、17年に起きた埼玉県の主力物流センターで起きた火災でしょう。急成長していたときの出来事でした。絶好調のときこそ、想定していないリスクはひそんでいるものです。「良い時は悪い時、悪い時は良い時」はこうした経験を通じて得たものです。
2.企業は上場すると競走馬になります。四半期ごとの成績表を渡されていくうちに、どうしても短期的な成績に目を奪われ、視野が狭くなり、やがて経営の方向を見失っていきます。ですが、企業はミッションの実現が本来の役割です。経営者は世の中を俯瞰(ふかん)する目をたえず養っていく努力が必要でしょう。
3.一方、日本という国に目を向けると、多くの人が俯瞰(ふかん)どころか事実から目を背けています。没落する貴族のように、先進国というプライドを捨てきれていません。国際的な指標を冷静に見れば、取り返しがつかないところまで来ています。何事も「はじめに意思ありき」です。無から有を生むのは意思以外なにものでもない。流されて見ているだけでは、組織も国も決して変わりません。
(参考:「日経ビジネス」2021年9月6日号)