耳より情報 2022年2月 No.161

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

バブルの本質は「贈与」である 櫻川昌哉(慶応義塾大学経済学部教授)

1.バブルとは、期待によってのみ価値が支えられるいかにも怪しげな存在である。アダム・スミス以来伝統的に、経済学が念頭に置いてきたのは、価値が同じもの同士が等価で交換させる世界である。一方、バブル資産と財の交換は、当の本人の意識はどうであれ、冷めた目で財の流れを見ると、交換ではない。財の一方的供与、つまり贈与である。
2.バブル経済の本質とは、等価交換を前提とする市場経済に不等価交換でしかない贈与が入りこんでいる世界なのである。贈与であるという点から見れば、頻発する資産バブルは言うまでもなく、政府が半ば国民に強制的に持たせる貨幣や国債もまた、バブルである。違いは、信用の根拠が市場にあるか、政府にあるかである。バブル理論の守備範囲は、資産バブルのみならず、金融政策や財政政策へと必然的に広がる。
3.2010年以降、先進各国が危機から回復したにもかかわらず、歴史的ともいえる低金利が持続している。低金利とは麻薬である。発行コストの低さをいいことに、国債を増発する金融緩和の誘因に駆られる。しかし、問題は解決しない。冷徹に見れば、低金利は、金融機関の劣化と技術進歩の停滞で傷んだ経済の姿を映す鏡である。

(参考:「日経ビジネス」2021年11月22日号)

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