このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
人材の支出は費用ではなく投資である 柳川 範之(東京大学大学院教授)
1.政府が人への投資を政策として掲げるなど、人的資本・人的投資に注目が集まっている。人材育成のための支出を、単に費用として認識するだけでなく、しっかりとした投資として位置づけ、人材を資本として評価する。人を大切にしてきたといわれる日本の企業にとっては、とても重要な視点だろう。
2.また、日本だけではなく世界でも、イノベーションを生み出すのは人材や人のアイデアだという視点から、人的資本の重要性が近年強調されてきている。今のところ日本では、非財務情報としての開示ルールをどうするかに焦点が当たりがちだ。しかし当然、現状の人的資本の的確な把握や、これから必要な人的投資の判断も重要となる。そして、大切なのは、それらを経営戦略としっかりリンクさせていくことだ。
3.しかし現状では、自社内にどのような人材、どのような人的資本が存在するのかを、しっかりと把握できている企業はかなり少ない。また、たとえ把握できていたとしても、それが人事部止まりになっていて、経営陣にデータとして適切に伝えられなかったりする。そのため、それが経営戦略と有機的に結び付いて考えられていない。この点は、これからの日本企業にとっての大きな課題だろう。
(参考:「週刊東洋経済」2022 年 9 月 3 日号)