このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
東芝漂流の原因は「言われたままに従う」文化にあり
1.1875年創業の東芝、そして1910 年創業の日立製作所。いずれもしのぎを削ってきた長年のライバルだ。ところが今、その明暗はくっきりと分かれている。日立の時価総額は 6.4 兆円。東芝は 2.3 兆円と、実に4 兆円もの差が生じた。どこで、それだけの差がついてしまったのか。
2.ターニングポイントはリーマンショックの2008年。日立は損失処理でウミを出し切った一方、東芝は目をそらし中途半端にしてしまった。東芝は今なお、その頃のツケを払い続けている。社員の質や事業において、東芝と日立にそんな大きな差はなかった。ただ一つ大きく違ったのは文化だ。東芝OBは、顧客に無理難題を押し付けられても文句は言わず、言われたままに従うのが東芝。日立は、顧客相手でも「できないことはできない」とはっきり意見するという。
3.東芝の現在の経営姿勢にも、この文化が影を落としているようだ。客、株主、従業員、政府などステークホルダーの要求に流されるまま、経営は無理を続け漂流状態に陥った。その結果、メーカーの強さが源泉である「技術」も、その歩みを止めてしまったかに見える。
(参考:「週刊東洋経済」2022 年 8 月 27 日号)