このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
確固たる歴史観が問われる時代 後藤 俊彦(高千穂神社宮司)
1.フランスやアメリカのように革命や独立戦争を経て近代国家をつくった国々とは異なり、悠遠(ゆうえ ん)なる太古に国の起源を求めたのが記紀を編纂した当時のわが国人(くにびと)の歴史観であった。混沌 (こんとん)たる宇宙自然の中から神が生ずるという記紀の描写は、17 世紀のオランダに生まれた哲学者スピノサの「存在するすべての物は神の本性を一定のあり方で表現しているとして、宇宙自然そのものが神のすがたである」という考えと類似している。
2.イギリスの歴史家が「国が行きづまった時には歴史に学べ」といったが、今日のわが国の国会論議やマスコミ報道をみると国家の大計を忘れて、実に些細(ささい)な問題に過敏となり、重要なすべての思考が停止しているように思われる。除夜の鐘と共に一年の罪・穢(けがれ)を祓(はらい)清め、私共の父祖が生きた遠い神代を偲(しの)びつつ、国民こぞって新年を祝う習慣は夏のお盆行事と共に国民的神祭りであると思う。
3.文化の源流ともいうべき神話や宗教を含めて、わが国も確固たる歴史観が問われる時代を迎えたように思う。 新たなる年の初めに、それらを学び直すことが重要ではないだろうか。
(参考:「致知」2023 年 1 月号)