このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
武士道精神の中心にある「惻隠の情」 藤原 正彦(御茶ノ水女子大学名誉教授)
1.日本の悠久の歴史の中で、戦乱の世はわずかにありましたけど、江戸時代二百五十年、戦争は一つもない。 非常に平和な時代が長く世界でも稀有(けう)な国です。それはなぜかというと、やっぱり日本には武士道精神があって、新渡戸稲造も言っているように、武士道精神の中心には惻隠(そくいん)があります。 2.上杉鷹山(ようざん)はまさに惻隠の典型です。貧しい農民のために藩主自らが率先して倹約をし、それを藩士に強制させ、農業や養蚕業などを興(おこ)し、一生懸命経済を豊かにした。ケネディ大統領が最も尊敬する日本人として挙げたことは有名です。この惻隠というものを取り戻さなければ、欧米に引きずられて自由とか平等とか人権とかばかり言っていても、人類は幸福になれないのです。もういい加減、そのことに気づかないといけないと思います。
3.産業革命以来、論理とか合理の勝利がもてはやされました。それで西洋人は、未だに論理とか合理を通せば世界は幸せになると思っているけど、もうそれをやって一世紀以上経っています。帝国主義、共産主義、グローバリズム、どれをやってもダメだった。この惻隠を中心に据えるべきだと日本人が世界に教えていく他ありません。世界を救うには日本の武士道精神、惻隠の情、これ以外にないと私は思っています。
(参考:「致知」2023 年 2 月号)