このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
多くの企業に欠落しているのは賃上げである 鈴木 茂晴(大和証券グループ本社名誉顧問)
1.将来に対する不安からさまざまな可能性を模索する人が増える過程で、「副業」という働き方が注目されているが、個人的には筋の立たない話しと感じている。そもそも、なぜ働き手は将来に不安を感じるのか。制度や待遇を整備し、社員に不安なく働いてもらう企業努力が足りないからだ。成長を感じてもらえる研修制度の整備や、働きがいを高める給与体系といったものに経営資源を投入しないから、社員は不安を感じているのである。
2.多くの企業は、従業員の副業を「就業時間外」に行うよう規定している。いくら本業に差し支えない時間とはいえ、夜や休日の空いた時間に別の仕事をしていたら、そのうち本業にも悪影響を与えてしまうのではないだろうか。多くの企業に欠落しているのは、従業員の働きに見合った金銭的報酬、すなわち賃上げなのではないか。
3,日本企業は以前に比べて株主への利益配分は厚くなったが、従業員にはほとんど変わっていない。いやむしろ少なくなっている。働きに応じた処遇を整備すれば、従業員のモチベーションは上がる。その結果、生産性も上り副業を考える人も出なくなるだろう。
(参考:「日経ビジネス」2022 年12 月12 日)