このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
企業は既得権益に浸って競争力を失った入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授)
1.日本経済の復活には企業間で切磋琢磨(せっさたくま)を重ねる必要があるが、どうでもいい規制があまりにも多すぎる。企業は既得権益に浸って競争力を失い、新しい事業を生み出す可能性を手放している。守るべき規制を拡大解釈し、守らなくてもいい規制まで設けている環境は、企業同士のなれ合いつながる。そのため日本と世界の間に横たわる格差が拡大してしまう。
2.その穴埋め策として重視するのは「非市場戦略」、いわゆるロビー活動だ。ビジネスの勝負はルール作りから始まっている。市場で正々堂々と闘う前に、ルールの隙間を泥臭く縫って、自分たちに有利な陣地をつくる。その感覚が日本企業は圧倒的に弱い。施策や規制の形成に関与する人たちと接触しているロビイストと、情報を交換する場所が全く足りていない。
3.ほとんどのビジネスは「白か黒か」ではなく、グレーゾーンで勝負が決まってしまう。鍵を握るのは、企業が専任の部署を設け、政府側と積極的に接触するガバメント・リレーションズ(GR)だ。日本でもロビイストのマーケット構築が望ましいが、内製できる企業はGR機能の強化に取り組んでほしい。清廉潔白にこだわり過ぎると勝ち残れない現実を直視すべきだ。
(参考:「日経ビジネス」2023 年1 月30 日号)