このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
祖業の撤退は大きな決断(創業者亡き後のセブンの行方) 伊藤 元重(東京大学名誉教授)
1.セブン&アイの業績は好調な一方、イトーヨーカ堂などコンビニ以外の事業は岐路に立たされている。コンビニは、各店のオーナーが経営するというフランチャイズ(FC)経営で成功している。これも本来は、大手チェーンが地域の小売業を侵食することを危惧した伊藤雅俊さんが、地域の小売りと共存共栄するためにこだわっていた運営方式だ。
2.かつては、そうしたコンビニと総合スーパー(GMS)との両輪で堅実に業績を伸ばしていたが、今はGMSが厳しい。そもそも「総合」がつく業界は苦戦している。市場が大きい食品は「食品スーパー」として生き残れるが、アパレルはユニクロのような専門店に太刀打ちするのは難しいからだ。
3.そういう意味で、祖業である自社アパレルからの撤退は大きな決断。実行するのは生身の人間だから思うようにいかないこともあろうが、GMSを変えようとしているのは十分に感じられる。伊藤雅俊さんは、とにかくまじめで、周囲の声を大事にする「昔ながらの商人」だ。打ち合わせが終わると、毎回必ずエレベーターホールまで見送りに来て、ずっと頭を下げていた姿が印象に残っている。
(参考:「週刊東洋経済」2023 年5 月20 日号)