このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
働き手はフラットな組織に引かれ始めている 入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)
1.人が組織に関わるモチベーションとは何だろうか。この20~30 年、世界経済はイノベーションが求められる時代になった。株式会社と市場が成長した、その前の100 年余りは、株主から集めた資本をより効率よく生かして利益を拡大する効率性が重要だったが、それだけでは足りなくなったからだ。
2.その時、人々を引きつける上で重要になったのが、経営者の未来へのビジョンだった。それへの共感がドライバーになって人々が集まるようになった。経営者を中心に自転車のスポークのように放射状に共感する社員がつながる、カリスマが活躍する時代となったと言える。一方、ティール(進化)組織は定義が明確ではない面はあるが、メンバーが自律分散的に共通目的に向かって動くものと言える。自律的だから上からの管理はあまりないフラットな構造になる。
3.ただ、この後、一方的にカリスマ経営者など強いビジョン型・中央集権型の企業が衰退するとは思わない。依然、イノベーションの一部を担うだろう。そこにティール(進化)などの新たな自律分散型組織が加わって併存する形がしばらく続くと考えている。だが、日本企業の多くは、いまだにビジョンやバリューの弱いヒエラルキー型組織。その変化はこれからだ。
(参考:「日経ビジネス」2023 年5 月22 日号)