このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
ゆがみを修正するイノベーションこそ重要 ダロン・アセモグル(米マサチューセッツ工科大学教授)
1.日本という国は、歴史的、文化的に特徴があるので、西洋の道を完璧に踏襲(とうしゅう)することはできないかと思います。しかし技術開発面では、日本は大変うまくいっていると思います。例えば製造業には米国より早くロボットを導入していますし、ロボット生産者のランキングなどを見ると、数多くの日本企業の名前が並んでいます。それは誇ってよい事実だと思います。
2.しかし、製造業以外はあまり芳しくありません。日本には技術面で非常に優れている伝統がありますが、規制やサービス産業の独占的な状況により、サービス産業における技術の活用が遅れています。例えば、ヘルスケア産業や娯楽産業、教育産業などです。日本の小売業では多くの新しい技術が使われていますが、これはその仕事を担う若い労働者が不足しているからでしょう。
3.世界のどこもかしこも、より多くのイノベーションを欲しがっています。しかし、イノベ―ションそのものだけでなく、(ゆがみを修正する)イノベーションの方向性こそ重要なのです。
(参考:「日経ビジネス」2023 年6 月5 日号)