このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
豊かさから安全・安定のための産業転換へ 寺島 実郎（日本総合研究所会長）
１．戦後の日本は豊かさを求めてエレクトロニクスや鉄鋼、自動車といった産業を次々に興し、輸出によって外貨を稼ぐことで成長してきた。ただ生産拠点を海外に移したことで競争力を失い、近年はアジアの経済発展が進む中で埋没している。豊かさから安全・安定のための産業転換に向けた基盤づくりが必要だ。
２．国内産業に新たな個性を与え、産業構造を変える可能性を秘めているのが防災や医療分野だ。新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻による混乱で世界各国はレジリエンス(回復力・復元力)の重要性に気づき始めている。今こそ「災害大国」の日本が蓄えた知見や技術を輸出産業にすることを視野に入れて伸ばしていくべきだ。
３．日本企業は自社の技術で社会課題を解決しようと高い志を持っているが、プロジェクトとして一緒に取り組むのが苦手だ。まずは日本企業が持つ技術や知見をデータベースにおさめ、現場で試行錯誤を繰り返しながら、相手国のニーズに応じて知見を組み合わせることができる「総合エンジニアリング人材」を育てていくことが欠かせないだろう。
（参考：「日経ビジネス」2023 年8 月28 日号）