
1.坂村真民先生の『全詩集』第七巻に「不思議抄」という詩がある。「神さま仏さまを祭るのが信仰ではない本当の信仰とは目に見えないものの不思議を知り素直な心になり すべてに愛を持つことだ」という一節もある。「目に見えないものの不思議」とはいったい何であろうか。
2.たとえば一本の木が大地に立っているとする。目に見えるのは、幹であり枝であり、茂った葉であり、またきれいに咲いた花であろう。しかし、木は土の上に幹があり枝葉が茂っているのではない。それを支えている根がある。根は目には見えない。しかし、目に見えない根がないと、木は立っていられない。
3,私たちを支えているのは何であろうか。両親の愛が無ければ、命を授かりはしなかった。そう考えてみると、目に見えない不思議が幾重にも幾重にも重なって、今ここに私は生かされていることに気がつく。私だけではない。あらゆる命は不思議なご縁で生かされている。そう気がつけば自ずと手が合わさり、命を大切にする慈愛の心も湧いてくるのである。不思議の世界を大切にしたいものである。
(参考:「致知」2025 年6 月号)