
1, 私は22 歳で出家して天台宗僧侶となり、縁あって2022年から信州善光寺の大勧進勧主を務めさせていただいています。改めて振り返ると、私が通っていた滋賀県甲賀市・伴谷小学校の講堂には、中江藤樹の肖像画が掲げられていました。藤樹先生の教えは心の深いところで私自身の生き方の指針となってきたように思います。例えば、藤樹先生は「五事(ごじ(を正す)という教えを残されています。五事とは貌(ぼう)、言(げん)、視(し)、聴(ちょう)、思(し)の5 つであり、穏やかな顔つき、優しい言葉、温かい眼差し、人の声に耳を傾けること、思いやりのある真心を、日々の生活の中で心掛けるように説かれていました。
2.この教えは、仏教が説く「無財の七施」に通じるものがあります。たとえお金がなくてもできる七つの施しのことで、具体的には眼施(げんせ・温かい眼差し)、和顔施(わがんせ・優しい笑顔)、言辞施(ごんじせ・優しい言葉)、身施(しんせ・重たい荷物を持ってあげるなど体を使ってできる奉仕)、床座施(しょうざせ・席を譲る)、房舎施(ぼうじゃせ・雨風をしのぐ場所を与える)を指します。
(参考:「致知」2025 年8 月号)