
1.幕末動乱の時代を生きた人々にとって思想とは、ただ自らの意思の表明として論じるだけではなく、行動に表され、思想そのものを生きる真剣な時代であった。それは現代においても求められることである。取るべき時に取らない責は問題を長期化させるだけでなく、さらに様々な対立や抗争を生み、政治や組織の健全な発展を停滞させる。
2.『論語』に「身を殺して仁を成す」という言葉がある。責任を取るということは、自らが所属する組織や共同体の円滑な発展のための一種の自己犠牲であり、広義の意味での禊(みそぎ)に当たる。この世に過(あやま)ちを犯さぬ人はいないが、けじめをつけられない人や組織は同じ過ちを繰り返すものである。
3.我が国には、お正月とお盆という二度の国民的神祀(かみまつ)りの時がある。お盆は一年に一度、祖霊を招きお食事を共にしながら感謝と報恩の時を過ごす。終戦八十周年を迎えて、戦禍に斃(たお)れた数多(あまた)の人々の御冥福を祈り、その人々の心意に心を傾けて新日本を建設する責任が私どもにはある。
(参考:「致知」2025 年10 月号)