No.868 苦労の正しい理解    田口佳史(東洋思想研究家) 

 

 

1.「天の将(まさ)に大任(たいにん)を是(こ)の人に降(くだ)さんとするや」『孟子』。意味は、天がこの人と見込んで、世の為人の為になる大仕事を任せようとする時には、必ず先ず行うことがある。それは、苛酷(かこく)な試練を与えることです。その人の心を苦しめたり、その志を挫折の方向に引っ張ったり、その筋骨が疲労の極致に至るほどの労働を与えたり、金や物が全く足りないほどの窮乏に追いやったり、何をやっても思い通りにいかないなどのひどい苦境に立たせたりするものです。 

2.何の為なのか。大任とは、言い換えれば、尋常一様(じんじょういちよう)の困難さではない悪戦苦闘の状況が待ち受けていることを承知の上で行うべきことなのです。したがって苦難に耐えるほどの不屈の精神を身に付ける必要があります。更にもし未熟な部分があれば、そこが致命傷になることも有り得るわけで、こうした欠点や弱点を解消しておくことも必要です。 

3.天は全(すべ)てを見通して、予(あらかじ)め体験させておくのです。これがいま自分を襲っている苦労の正しい理解なのだといっているのです。 

 (参考:「致知」2025 年10 月号) 

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