
1.「財を生(な)すに大道(たいどう)有(あ)り」。「四書」の一つ、『大学』にある名言です。個人にとっても、財を生すことは誰しもが望むことでしょうし、国にとっても、とりわけ財政が健全なることは大切なことです。その財を生すには「大道」があるといっています。更に今回の名言の前にある章句を読むと、もう一つの名言に当たります。「君子に大道有り」。徳治を行う人間自体に、大道があるのかが問われるといっています。
2. では、君子の大道とは何か。「必ず忠信(ちゅうしん)以(もつ)て之を得、驕泰(きょうたい)以て之を失う」とあります。忠は真心、信は信任、信頼です。儒家の教えでは、信は仁義礼智の四徳を揮(ふる)うことにより、相手の心に生じて得られるものとしている。反対に、驕(おご)りたかぶった途端に失うのが大道だというのです。
3. 江戸期の大儒の多くは、この「君子の大道」と「財を生す大道」は、とても密接な関係にあると読むべきだと主張しています。
(参考:「致知」2025 年11 月号)