このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
「大きい数値」がもてはやされる時代、磨くべきは「小さなものを見る力」 松岡正剛(編集工学者)
1.世界にあふれる情報をいかに編集し活用するか考え続けてきた立場からすると、今の日本には気になることがあります。「小さいものを見る力」が失われてきていることです。小さなところに亀裂が入り、それが大きなことにつながる。こういう視点が社会からだんだんなくなっているのではないかと危惧しています。その一方で目立ってきたのが、「大きい数値」に対する過剰な信用です。
2.フェイスブックの「いいね」やツイッターのフォロワー数も大きいほど、そこから発信される情報に価値があるとされます。数の多さに意味がないわけではありません。それだけでは「1羽の鳥」の動向に注目できなくなってしまいます。大きい数値を持つ情報に人々が頼る背景には、社会の安定志向などがあるのでしょうが、その結果、弱く、小さく、目立たない情報は語られなくなっています。
3.フェイスブックの「いいね」では、その情報に接した人の量は測定できても、その情報の価値は推し量れません。その情報の厚みまで示す指標は今のところつくられていません。多様化とは基本的に「大きいものもあるけど、小さいものもあってそれを同じように扱う」という見方です。ダイバシティーやバラエティーといったことを大切にしたいのであれば、小さなもの、少数なもの、弱いもの、壊れやすいものから発信される情報にも目を向けたほうがいいと思います。
(参考:「日経ビジネス」2021年3月29日号)