耳より情報2021年6月 No.41

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

世界規模の危機こそ「人新世」の末路 斉藤幸平(大阪市立大学大学院准教授「人新世の資本論」の筆者)

1.コロナ禍は、すでに存在していた資本主義の構造的矛盾を徹底的に可視化した。中でも格差問題は深刻だ。昨春以降の米国では、ビリオネアが資産を44%増やす一方、2000万人以上が失業した。感染抑止のためデジタル化や、オートメーション化が加速することで、富の一極集中はさらに深刻化するだろう。
2.だが、問題は富の集中だけではない。資本主義による環境破壊も歯止めが利かない。野生動物取引やアグリビジネスのための乱開発が続き、社会と自然の距離が縮まっていけば、別の新型ウィルスとの接触可能性は必然的に増えていく。また過剰な森林伐採によって気候変動も進行していくし、環境の急激な変動に耐えられない動物は数を大きく減らし、生き残りを懸けた動物の大移動は未知のウィルスが社会へ侵入するリスクを高める。パンデミックや気候変動、生物多様性の喪失はどれもつながっており、行き過ぎたグローバル化が文明を脅かす。
3.こうした状況を前にして、ノーベル化学賞受賞者のパウル・ウルッツェンは地質学上の新たな時代区分として「人新世」という呼び方を提唱した。気候変動やパンデミックのような世界規模の危機こそ「人新世」の末路なのである。


(参考:「週刊東洋経済」2021年4月10日号)

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