このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
「観光客依存」が露呈した日本
1.主要各国の2020年の国際収支統計が出そろった。外国人観光客による消費額を示す「旅行収入」は、日本が2017年比77%減と主要先進国で最大の落ち込み。米国やイタリアは6割減、ドイツは5割減にとどめた。厳しいロックダウン(都市閉鎖)を繰り返してきた欧米より、なぜ日本のほうが外国人消費で影響を受けるのか。背景には、訪日戦略で「観光目的」に頼りすぎていた面が浮かび上がる。
2.かって日本は経常収支のうち、貿易黒字で外貨を稼いでいた。2011年の東日本大震災を境に原発が止まると、火力発電燃料の輸入市況が貿易収支を左右しだした。2012年に自民政権に復帰すると、大幅な赤字だったサービス収支の構造転換を政府は模索した。そこで知財と並んで重視したのが旅行収入だ。ビザ発給要件の緩和などが功を奏した一方、不測の事態には弱かった。留学生のように、地域に根ざした安定的なインバウンド経済を築けるかが今後試される。
(参考:「日経ビジネス」:2021年4月19日号)