耳より情報2021年7月 No.45

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

企業の目的はシェア争いや販売量の増加ではない ハーマン・サイモン(経営学者、元独マインツ大学とビーレフェルト大学教授)

1.スウェーデンの家具製造小売りイケアは家具の小売業者として、同業者より低価格を掲げながら、大きな利益を生んでいる。それを可能にしているのは独自のビジネスモデルだ。通常の家具業者はコストをかけて商品を工場で組み立ててから出荷する。それに対して、イケアは消費者に家具を組み立てさせることによって、低価格でも利益を確保する。物流面でも、戸棚などを組み立てた状態で販売する会社は、輸送コストが非常に高くなる。イケアは組み立て前で、より小さなものを運ぶことになるので、この点でも有利だ。
2.資本主義で、企業を突き動かす最大の目的は利益だ。ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンは、64年に「株主価値を企業の唯一の目標とすべきだ」と述べ、さらに経済学者のアルフレッド・ラパポート教授が86年、米ハーバード・ビジネス・レビュー誌でこれを発展させ、「株主価値」の概念を広めた。
3.だが、私に言わせれば、フリードマンは利益を語る時、利益の前に「長期的」の一言を入れ忘れ、視野が狭すぎた。「短期的で不適正な利益」は確かに否定されるべきだが、「長期的で適正に稼ぐ利益」についてであれば、企業はフリードマンの言う通り、追い求めるべきだ。そして、企業の目的を達成するために大切なことは、シェア争いや販売量の増加ではなく、価格戦略であることを強調したい。

(参考:「日経ビジネス」2021年5月10日号)

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