このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
「つるつるぴかぴか」は古くさい 隈研吾(建築家)
1.未来都市というと、皆さんはつるつるぴかぴかの都市をイメージするかもしれない。僕はもっと原始的なものに変えていくほうがいいと思っている。例えばその地域の自然素材を使った、空調に頼らないような生活。そこにDX(デジタルトランスフォーメーション)を生かす。つるつるぴかぴかの都市にするというのは今、むしろすごく古くさく見える。
2.日本は、実はコンクリートと自動車のモデルから一番離れた都市づくりをしてきた、世界でも非常にピュアな存在だ。特に江戸の街づくりはたくさんのヒントをくれる。低層都市だから地面に近いし、水にも近い。江戸の人は絶えず自然を感じながら生きていた。自然に近いほうが精神的に落ち着くし、人間関係もスムーズになる。日本人にはそんな特質が備わっているのではないか。
3.一番大きな転換点は第2次世界大戦の後だろう。コンクリートと自動車によって東京が一気に自然から隔離されてしまった。バブル崩壊までのイケイケの感じというのは、本来の日本の姿だとは思わない。少子高齢化時代に最も適したモデルが日本の江戸時代にあったわけで、僕はもう一回現代の技術でそれを復活させたい。
(参考:「日経ビジネス」2021年9月13日号)