このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
今は、社会の根底が変わった 月尾嘉男(東京大学名誉教授)
1.1993年にクリントン大統領とゴア副大統領が情報社会をつくる政策を掲げ、日本もNTTはじめ情報社会を新たにつくると発表しました。それがちょうど日本が落ち目になった時期の最初です。一変した社会の仕組みに対応が遅れ、現在のような状態になったと思います。
2.明治時代が始まって以来、日本では工業社会に合わせる政策が採られてきました。典型的なのは教育です。それまで寺子屋や藩校など、各地に異なる教育システムがあったのですが、国定教科書を用いて全国一律の教育をしてきました。この画一性を追求し続けてきたことが大成功につながったわけです。
3.つまり、120年間の工業社会では「同じ」であることに価値があったのです。同じものを大量に作っていけば価値が増えました。しかし情報は違います。1番目の情報には価値はありますが、2番目以下は同じものでは価値がありません。つまり社会の根底が変わった。その途端に日本のシステムが通用しなくなった。現在は、そういう状態ではないかと考えます。
(参考:「日経ビジネス」2021年9月27日号)