このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
トラとアリとどっちが強いか、アリが強い 伊藤 雅俊(イトーヨーカー堂創業者)
1. セブン&アイ・ホールディングス(HD)名誉会長の伊藤雅俊氏が3 月10 日亡くなった。享年98 歳である。
東京・足立区千住の焼け跡で家族と始めた2 坪の洋品店が、イトーヨーカ堂の原点だ。
2,96 年にヨーカ堂の名誉会長に復帰した。このときのインタビューで「あと5 年もして、経済のグローバル化
が一層進むと、先進国のマーケットには、あらゆる国からの商品が流れ込んでくる。一方で、強い産業がどんどん海外に出てしまえば、賃金は上がるはずがない」。「これを小売業から見れば、モノの値段はドンドン下がるということ」。21 世紀に到来する「安いニッポン」の風景を視野に据えた、卓越した商人ならではの先見性といえるだろう。
3.「私は商売を2 坪の店から始めたから、お客が店に来てくれることのありがたみがわかる。だけど今、グルー
プ全体で毎年2000 人も入ってくる連中は大きな会社だから安心だと思って入る。そうするとだんだん官僚化してくる」。「トラとアリとどちらが強いのか、といったらアリではないかと思っている。顧客の変化への対応では大組織は本当に弱い」。
(参考:「週刊東洋経済」2023 年4 月1 日号)