このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
需要が失われた30 年から供給が失われる30 年へ 小林 俊介(みずほ証券チーフエコノミスト)
1.過去の記憶として葬り去られつつある「失われた30年」。1990 年以降を振り返ると、バブルの崩壊、その後は不良債権問題により金融機能が低下した。同時にグローバルゼーショが広がり、空洞化が進展した。このような多くの要因から発生した劇的な需要不足が、日本経済の長期停滞を演出した。
2.今は幸か不幸か、長年の賃金低迷と近年進展した円安の結果として日本人の労働コストが相対的に安価となり、空洞化は止まった。コロナ禍を受け、再び苛烈な需要不足が生じたものの、経済再開により需要が正常化している。こうして日本経済の問題は成長の天井を規定する供給側に移った。実は需要不足の陰で、供給能力の劣化は着実に進展している。
(参考:「週刊ダイヤモンド」2023 年8 月5 日号)