このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
経営陣の役割は失敗をとがめる組織文化を改めること 野田 稔（明治大学専任教授）
１．既存事業の改善と、新たな分野の開拓を目指す「両利きの経営」では、主力事業の深化と新規事業の探索の同時進行が重要だとされている。管理職が現状で忙しいなら、新規事業開発室といった専門部隊を設ければいいのかと言えば、そう単純な話ではない。
２．経営陣の役割は失敗をとがめる組織文化を改めることだ。ある総合商社の関係者は「課長級が新たな挑戦よりも管理業務を好む」という悩みを吐露(とろ)していた。失敗を恐れる現場の不安の高まりは社員の創造性を失わせてしまう。今、日本企業で心理的安全性が注目されるのは、それが欠けているからだろう。社員が主役になって「起業家型リーダーシップ」を発揮するには、中間管理職が「支援方リーダーシップ」で社員の育成とコーチングなどを担うことが効果的だ。
３．世界初のクロマグロの完全養殖事業を立ち上げた豊田通商は経理部社員のアイデアを役員が拾い上げ、事業化を管理職が後方支援して成功した。このような「シンプル(軽快な)リーダーシップ」こそ、これからの企業に求められるものだろう。
（参考：「日経ビジネス」2023 年10 月9 日号）