勝利の極意(相手と肉薄する勇気を持つ) 瀧澤 中(作家・政治史研究家) 

1.柳生宗(むね)巌(よし)。剣豪小説などで有名な柳生十兵衛のお祖父さん。柳生新陰流の流祖。あるとき、宗巌の元を一人の客が訪れてきた。「明日、仇と決闘をするのですが、私は剣法が未熟です。どうすれば勝てるのか教えていただきたい」。宗巌はこんな教えを授けた。「刀の鋒(きっさき)で相手を斬ろうとする者は敗れ、刀の鍔(つば)(手元)で相手を倒そうとする者は勝つ。明日は鍔で、相手を撃破するように努めなされ」。つまり、相手に肉薄して戦えということである。翌日、客人は見事に決闘に勝利した。 

2.問題が起きたときに、解決する方法は大小さまざま。「今だけごまかせばいい」と思えば「鋒」で表面をなぞるだけの改革で終わろう。先送りは、解決手段がない場合に有効なときもあるが、先送りするのはたいがい当事者に勇気や覚悟に欠けているケースが多い。根本から問題を解決しようとすれば、短期的には損害を被り、摩擦が生じるかもしれない。 

3.すなわち、勝利を手にするには鍔と鍔を重ねるような戦い方、相手と肉薄する勇気を持って戦うのが一番だ、と宗巌は教えます。宗巌は柳生家憲(家訓)に、「昨日の我に今日は勝つべし」と残しています。 

(参考:「週刊ダイヤモンド」2024 年3 月30 日号) 

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