何気でない出会いが生きる力となる  鈴木 秀子(文学博士) 

1.私は国木田独歩の『忘れえぬ人々』という作品がとても好きなのですが、主人公である文筆家は旅先でいろいろな人と出会います。そこで描かれている出会いとは島の浜辺で何かを拾っている人だったり、人前で琵琶(びわ)を奏(かな)でている琵琶僧だったり、すべて何気ないものばかりです。 

2.しかし、主人公は孤独を感じる度にその人たちを思い出しては生きる力を得ています。この作品は、人生における一つひとつの出会いがいかに小さなものであっても意味があるということを教えてくれているように思います。何気ない出来事がその人にとって忘れがたいインパクトを与えることはよくあることです。出会いに偶然はなく、必ず何らかの意味があるのです。

(参考:「致知」2024 年6 月号) 

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