1.世が乱れてくると、精神的な支柱になるものが求められますが、それは偏った思想ではなく普遍性がなくてはいけません。『論語』はまさしくそういう訓言の宝庫といえますが、極端に言えばこれは孔子一人の思想ではなく、歴史の中で培われてきた普遍性のある教えがベースにあるともいえます。そういう基本になる考え方がしっかりないと、乱れた世の中を正すことはできないと思います。
2.日本はこれまで平和でしたから、そういうものはあまり顧みられなくて済んでいました。けれども世が乱れてくると、やっぱり『論語』のような精神的支柱になるもので常識として求められてくるわけです。渋沢栄一は、何か迷いが生じる度に『論語』をひもといていたそうですが、『論語』に親しむ人は、そういう普遍性に魅力を感じるのではないかと思います。
(参考:「致知」2024 年7 月号)