不適切だったニッポンの商取引慣行

1. 昨年11 月末に内閣官房と公正取引委員会が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」がある。同指針では、発注者などが採るべき行動として12 項目が明記されたが、とくに重要な3つの項目を取り上げる。1 つ目は「下請けの労務費上昇分の取引価格への転嫁を受け入れることについて具体的に発注者の側の経営トップが関与すること」。本来、発注企業の購買担当者は「安く買いたたく」のが出世への道だ。だからこそ経営トップが自らが社内に指示することが重要になる。 

2. 第2 の項目は「年に1~2 回など定期的に労務費転嫁についての協議の場を発注者側から設けること」。これはスポット取引と称して長年同じ価格で更新される取引や、長年価格が据え置かれた取引が日本の商慣行では当然のように存在することに対応したものだ。 

3.第3 は「労務費上昇の理由の説明を下請けに求める際は、最低賃金上昇率や春闘妥結額など公表資料を基とすること」。エネルギーや原材料のコスト上昇に比べ、労務費上昇の価格転嫁は下請け側が最も主張しにくいことだとされる。購買部門には「困ったことがあれば下請けをたたけばいい」があったが、今思えば不適切だったといえる。 

 (参考:「週刊東洋経済」2024 年4 月20 日号) 

>NPO法人マザーズドリームでは、いつでも寄付を受け付けています

NPO法人マザーズドリームでは、いつでも寄付を受け付けています

NPO法人マザーズドリームの活動にご協力ください。