より高度な価格設定力をつけることが重要    柳川 範之(東京大学大学院教授) 

1.社会全体でみると、入社以来、値上げを経験がないという社員もかなり存在する。そんな中では、どういう判断軸でどの程度価格を引き上げるのかという判断がなかなか難しい。価格を変えないという意思決定は、判断としてはシンプルなものだ。だからだ。何も動かさないのは容易だが、動かすとなると、どこまでどう動かすかは複雑な判断となる。 

2.しかし、そもそも社内の仕組みやシステムとして、値上げすることが前提とされていないという会社も少なくないようだ。そのような会社においては、価格引き上げの意思決定をする社内体制の整備や、意思決定ルールの構築がまず必要となる。より強調すべきポイントは、単に値上げをすることに慣れるだけでなく、より高度な価格設定力をつけることの重要性だ。 

3,単によいものを安くというだけでは付加値生産性は高まらない。そのために活用すべきなのは、やはりデータであり、それに基づいた戦略策定だ。ライバル企業の価格設定動向なども織り込んだ詳細なデータ分析は、価格設定力をつけるうえで、重要な武器になる。この点におけるデータ分析は、これから一層重要度を増すのではないか。 

(参考:「週刊東洋経済」2024 年7 月13 日号) 

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