天地の働きを無にしない   田口 佳史(東洋思想研究家) 

1.『易経』を読んでまず感じるのは、何とかこの世を健全な状態に保とうと懸命に努力を続けている「天と地」の姿です。天の働きは天地開闢(かいびゃく)以来一刻として休むことなく、この世を健全に保ち続けるために、精神的で動態的な働きを続けているのです。広島と長崎の原爆による被害は、これ程の非人間的行為はないと言わざるを得ません。 

2.しかし記録を読むと無残極まりない廃墟の街にも、数ケ月後には何と野草の新芽の緑が見られ、人々の心を癒(いや)したとあります。天地の懸命な働きによる私たち人間に対する励ましと思うと、人間の傲慢さが無性に恥ずかしくなります。人間が謙虚になり、天地の働きを無にするようなことをしなくなれば、異常な暑さも止まるでしょう。 

(参考:「致知」2024 年11 月号) 

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