楽ができるのに苦労を買って出る(リーダーのあるべき姿)    瀧澤 中(作家・政治史研究家) 

1.変わり者には「楽ができるのにわざわざ苦労を買って出る」といった人物を指すことがある。戦国時代「流浪の関白」といわれた近衛前久はその代名詞といっていい。関白は公家社会で最も地位が高い。近衛前久はそういう貴人でありながら、まず上杉謙信と盟約を結び、関東に赴く。信じがたいことに、この時の誓書を前久は自身の血で書いている。そしてなんと城の防衛にもあたった。 

2.近衛前久の目的は何であったろうか。前久は、長く続いた戦乱で窮状著しい朝廷を再興したいと願い、それには各地の有力大名を頼るのが早道と考えた。単に頼るだけではなく、大名の手足となって役立つことで自身を認めさせ、大名を動かそうとしたのである。貴人が野に出て、私欲ではなく朝廷のために長時間にわたり京以外で行動し続けたことは、捨て身のリーダーのすさまじい意志力を感じる。 

3.元手も人材も限られた中で、リーダーは何をすべきか。やるべきことは種々あるが、リーダーの背中を見せることは重要である。危機あらばいつでもその身を最前線に進出させ、「かかるリーダーありき」を示すことは、組織をどれほど鼓舞(こぶ)することができよう。

(参考:「週刊ダイヤモンド」2024 年10 月5 日号) 

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