No.771 商売の尊さは世の中の不足を埋めること    後藤 俊彦(高千穂神社宮司) 

 

1.人類は火の発明により豊かな文明をつくり出すことができたが、マッチ1本ほどの小さな火種が、山林も人家と人々の平和な暮らしも一瞬にして奪ってしまうところに火災の恐ろしさがある。いまから百年も前に寺田寅彦は、著書『天災と国防』の中で「文明が発達すればするほど自然災害は大きくなる」と語っている。人類の目指す文明が、天地自然の理にかない、正しいものでなければ人類は自滅の道を歩む恐れがある。 

2.我が国は明治維新を通して資本主義国の道を歩んできた。しかし、19世紀以来の我が国の経済活動の精神には、福沢諭吉が「エコノミー」という用語を「経世済民」(世を治め、民生を安んずる人民のための政治)と訳語したように、商売(あきない)の尊さは売り買いいずれも益し、世の中の不足を埋めることを商人道とした近江商人の儒教的精神に通じるものがある。 

3.自国の存亡を懸けて目まぐるしく変化してゆく世界で、自国自身を見失うようではいけない。国家は常に歴史と共にあり、民族の生命そのものである。私どもは悠久の歴史を持つこの国の歴史を学び、混迷を深めてゆく世にあって国家として使命と理想を発信してゆくべき時代を迎えている。

(参考:「致知」2025 年4 月号) 

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