
1. イノベーションさえ起こせば、日本経済が抱える課題を一気呵成に解決できる。そう論じる経済専門家は少なくない。ただ、18世紀後半の産業革命の際、恩恵は一部の人に集中し、大多数はむしろ実質賃金の低下に長く苦しんだ。幅広い層に恩恵が広がったのは、100年近く後の19世紀後半だった。1990年後半以降のIT革命も同じ道を辿るのではないか。
2. 創造的破壊とも呼ばれる通り、イノベーションは新たな経済的価値を生み出すことでメリットを得る人がいる一方、古いスタイルで経済的価値を生み出していた人はダメージを被る。近年、イノベーションに取り組む人のリスクをシェアする社会制度が整えられる一方、ダメージを被る側、破壊される側への配慮が乏しくなっている。
(参考:「週刊東洋経済」2025 年2 月1 日号)