
1, かねて日本の長期停滞の元凶は、儲かってもため込み、賃上げも国内投資も消極的な大企業にあると論じてきました。生産性改善の果実が正社員にも非正規雇用にも分配されないから、停滞が続くのです。「収奪的な社会制度では一国経済は衰退する」(2024年にノーベル経済学賞を受賞したダロン・A・アセモグルとジェームズ・A・ロビンソン)。気付かないうちに、日本は収奪的社会に向かっています。
2, アベノミクスが始まった13年度に300兆円だった利益剰余金は、23年度に600兆円まで倍増しました。一方、人件費の増加はごくわずかです。ため込んだ利益を賃上げや国内投資に向かわず、大企業は海外投資を加速させています。その結果、企業利益は伸びましたが、それ以上に飛躍的に伸びたのが配当金です。配当や株高を享受するのは、外国人投資家ばかりです。
3, 人件費抑制のために、産業界が非正規雇用の仕組みを編み出したこと自体が、収奪的なイノベーションだといえます。成長戦略の重要性は否定しませんが、日本経済の健全な発展には公平な分配が不可欠です。
(参考:「週刊ダイヤモンド」2025 年3 月29 日号)