
1, トランプ政権が打ち出した関税政策を貿易赤字に対するトランプ大統領の気まぐれとみるべきではない。また関税政策を製造業の米国内への回帰や雇用を取り戻すという意味だけで考えてはいけない。関税政策の根源には、米国の財政状況が行き詰まりつつあること、言い換えれば、米国の信用が保てなくなりつつあることがある。それは唯一の大国だった米国の地位が、中国に脅かされつつあることも意味する。
2, 米国が陥っている財政不安から回復するため取られているなりふり構わぬ行動は、世界の秩序も変えようとしている。今回の事態はニクソンショック(金本位制の停止)やプラザ合意(為替レートの協調介入などによる調整)と同じ系統の問題である。米国の問題への対応策である。
3, 今回のトランプ関税ショックの背景には、米国企業のファブレス経営化が進む中で(特に中国に対し)米国の貿易赤字の拡大が深刻化し、経常赤字、対外純債務が拡大し、米国が耐え切れなくなってきたことがある。今回、米国が耐え切れなくなっているのは、最終的には財政である。このままいくと、米国の財政破綻が見えてくる。
(参考:「週刊ダイヤモンド」2025 年5 月24 日号)