
1, 『礼記』に、「孝子(こうし)の深愛(しんあい)有る者は必ず和気(わき)あり」とあります。意味は、「父母を真に深く愛する孝行の人は、必ず和気、なごやかであたたかい気がただよう」です。戦後日本経済をリードした土光敏夫は、自社の人事部長に、「孝行者を採(と)ってくれ」としきりに言ったそうですが、こうした人柄の持ち主であればどこの会社も欲しい人材ではないでしょうか。
2.孝行といえば中江藤樹が有名ですが、その藤樹の名著『翁問答』には、孝行について記されています。例えば、「天君(てんくん)という先覚者と「体充」(じゅうそく)という弟子の問答対話があります。体充が「人間が一生で従うべきは、どのような道でしょうか」と問い、天君が「われわれ人間には至徳要道(しとくようどう・徳の至りという重要な道)、という天下無双の霊宝がある。この宝を守り、全ての行いの要点とすべき」と説きます。
3.この宝を求め学ぶために語ったのが『孝経』です。この「孝」という「徳の至り」が働いて人の心に通じるのは、「孝」が「愛と敬」から成り立っているからだといいます。
(参考:「致知」2025 年9 月号)