
1.孔子はどちらかといえば、忠恕(ちゅうじょ)や仁など慈愛を強調した人ですが、孟子は、義を重視し「仁義礼智」の四徳の発揮を主張しました。『孟子』は、したがって自己の人間としての在り様を明確にしたいと言う欲求には、打ってつけの指導書なのです。
2.その中に「良能・良知なり」『孟子』という名言があります。人間の人間たる根拠に「良能」と「良知」があり、これらは生まれながらに与えられているものと言っているのです。良能とは、「能」とは物事をなし得る力ですが、修練訓練によらず、これを持っているのが人間である。更に、良知とは、自然に物事を知る力ですが、これも人間であれば既に保持しています。
3. どの様な時代であれ、世の中が混乱、混迷してくると、基準、規範が求められてきます。それは、規範である道理や道義にくらい人が多くなり、正しい判断に迷う人が多くなるからでしょう。孟子が亡くなって1千7百~8百年経って、この「良知」が復活します。「良知即(すなわ)ち是(こ)れ天理」と言い、「良知吾が心の本体」とも言う。人間の心と天理は、良知によってつながっているのです。
(参考:「致知」2025 年12 月号)