このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
両利き経営では足りない、4象限管理を大胆に回転させる 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)
1.経営者の条件は年齢では決まらない。年を重ねれば情報が蓄積されアドバンテージにもなるが、勉強を重ね頭のアップデートができなければ「老害」にも成り得る。時代を読み、会社を変えていくビジョンを持ち、社会に貢献しながら貪欲に稼ぐ。苦しくてもこれらを持ち合わせていればトップにふさわしいだろうし、これらを失った人は若かろうと老いていようと責任ある立場から去るべきだ。
2.稼ぐ形に関して言えば、私はかねて「4象限管理」を提唱してきた。事業のライフサイクルと成長性・収益性をもとに、個々の事業を「次世代事業」「成長事業」「基盤事業」「課題事業」の4種に分けて、スピード感をもって回転させていく。そんな考え方である。弊社で言えば、カーボンニュートラルの流れを追い風に、炭素循環につながる素材は「次世代」に位置づけられるだろうし、成長は見込めずとも安定的に収益を上げられる事業は「基盤」に分類できる。一方、長らく会社を支えていた部門や製品であっても、収益性の低さや循環負荷への懸念があれば「基盤」から「課題」へと位置づけ、何らかの改善が欠かせなくなってくる。
3.良いときにこそ、悪くなった場合に備え布石を打つ。近年、ちまたではいわゆる「両利き経営」が流行語になっている。無論、それをむげに否定するつもりはないのだが、正直に明かせばこれだけでは事足りない気がする。
(参考:「日経ビジネス」2021年3月22日号)