このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
周りに流されず決断する(「胆識」を身につける) 淡輪敏(三井化学会長)
1.経営者にとって最も悩ましいのが、事業撤退や拠点閉鎖といった、やめる・止める判断を迫られる場面ではないでしょうか。数年前、海外のとある生産拠点を存続させるべきかどうかが経営会議の議題になったときのことです。確かに業績だけで見れば閉鎖はやむなしという状態で、関係者のほぼ全員がすぐにでも撤退すべきだとの意見で一致していました。結局、腹をくくって決めたのは、その工場を残すということでした。
2.人間は誰しも、周りの意見や表向きの情報に流されやすいものです。このときも、私が常に意識していたある言葉がなければ違う判断を下していたかもしれません。「胆識(たんしき)」。多くの政・財界人の師となった陽明学者、安岡正篤の言葉です。学問などで得られる「知識」に経験が加わると「見識」に、そこに判断力・実行力が伴うことで初めて「胆識」となる。
3.自由闊達で風通しが良い組織でなければ、ツキは呼び込めず、優秀な人材やパートナー企業も集まってきません。投資判断などのルールを一旦決めたらあとは任せる。メッセージを伝えることは大切ですが、指示したい気持ちをこらえ、余計な口を挟まない。これも経営者の大事な仕事です。
(参考:「日経ビジネス」2021年4月26日号)