このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
SDGsと「論語と算盤」の共通点 堀内勉(多摩大学社会的投資研究所教授)
1.「会社の目的は株主価値の最大化にある」という株主資本主義が行き詰まりを見せていることはもはや明らかであり、地球という狭い空間の中で、人々がネットワークされた21世紀の世界においては、必然的に自分以外のステークホルダー(利害関係者)との関係性や多様性を意識せざるをえない状況にある。
2.その時に必要になってくるのが、「こうあるべき」という「強い規範」ではなく、相手を思いやることから生まれてくる「弱い規範」としての「共感」である。国連のSDGsは、世界を持続可能性のあるものにするために必要な17項目だが、それ自体には何ら強制力はない。それらを実現するために自分に何ができるのか、各人がよく考えてみようという提案である。
3.そこには、縦型の権威により、共感を欠いたまま何かを強制しようという強い力は働いておらず、横型・水平型に展開する共感の輪によって地球の持続可能性を担保していこうという思惑がある。渋沢栄一の「論語と算盤」も、修身的な意味で「金儲けのために算盤(ビジネス)を学べ」と言っているわけではなく、「世の中をよりよくするためには、論語と算盤の両方が大切なのだ」と言っているにすぎない。
(参考:「週刊東洋経済」2021年7月3日号)