このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
日本企業停滞の原因(その2、経路依存性) 入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)
1.一体、この日本企業の変わらなさは何なのか。僕は、これは「経路依存性」だと理解しています。経路依存性とは、既存の仕組みやルール、意思決定などに縛られてしまうことを言う。会社や組織のビジネスモデルは、いろいろな要素が合理的にかみ合って出来上がっています。合理的にかみ合っているからこそ、会社はうまく回っていきます。ですがそれ故に、どこか1カ所だけ変えようとしても、なかなか変えることはできない。かみ合っているので、必ず抵抗勢力が生まれる。
2.この合理的にかみ合っていることは、かつては日本の強さとして語られることもありましたが、今では弱さでしかありません。日本の大企業では、この経路依存性が非常に強い。製造業でイノベーション活動を進めようとしても、今までの均質で決まった製品を大量に作るための組織なので、なかなか変えることかできなくてイノベーションは起きません。例えば、ダイバーシティ経営をやろうとしても、均質な人がいることで全ての事業が回っているのだから、それまでいる多くの均質な社員は抵抗勢力となります。
3.経路依存性は日本で最も重大な問題だと思っていて、もしかしたら、企業だけではなく日本の社会全体が抱える問題なのかもしれないと思っています。
(参考:「週刊ダイヤモンド」2021年9月18日号)