耳より情報2022年4月 No.197

このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。

非財務情報の開示や充実の背景 伊藤邦雄(一橋大学CFO教育研究センター長)

1.機関投資家は気候変動関連のリスクや機会、人的資本など、非財務情報の開示や充実をますます求めるようになっている。その背景は大きく3つある。1つ目は会計の地殻変動だ。かつては最新の生産設備など、ピカピカの有形資産を持っていれば競争力が上がり、ひいては企業価値も高まった。ところが、1990年代後半以降、企業価値を高めるドライバーが無形資産へと移った。有形資産は財務諸表に載っている。ところが無形資産は一部のソフトウエアや「買収のれん」位しかない。
2.2つ目は国連のPRI(責任投資原則)に盛り込まれたことだ。その投資原則に非財務情報であるESG(環境・社会・企業統治)情報の分析が盛り込まれた。2006年のことだ。短期的な儲け主義で地球環境が荒らされていると憂慮した。
3.3つ目は、長期保有リスクへの関心の高まりだ。ESGにきちんと取り組んでいわば環境や社会の変化への適応力があるだろう、不祥事が起こる可能性も低いだろうということで、ESGが注目を集めた。そこにSDGs(持続可能な開発目標)の流れが重なり、非財務情報への関心が高まった。そこから、2015年に主要国の中央銀行や金融当局が集まる金融安定理事会で、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」ができた。

(参考:「週刊東洋経済」2022年1月22日号)

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