このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
裸の王様を生み出す組織の政治性 三枝匡(ミスミグループ本社名誉会長)
1.「組織の政治性」について考えたい。政治性の強い人は狡猾(こうかつ)である。経営者と真正面から議論することを避け、曖昧(あいまい)なまま妥協して引き下がりながら、仲間内では反対意見を垂れ流す。「面従腹背」は対立を避けて自分を守る手法だから、人間関係を長持ちさせる。そのステルス(隠密)性のおかげで、その人は昇進を続けたり、役員にまで上がってきたりすることもある。
2.そうなると、至近距離にいる部下に裏があるにもかかわらず、知らぬは経営者ばかりなりという状態になる。その状態が高じると、経営者は正しい情報や意見を聞けず、裸の王様のような状態になる。
3.社内の政治性を放っておけば、自分が足をすくわれかねない。かといって対抗して自分も政治性を発揮すれば、同じ穴の狢(むじな)になってしまう。経営者はそんなジレンマを抱いている。政治性が跋扈(ばっこ)する会社が、同時に戦略的成長企業であることはない。だからこそ戦略志向の企業文化をつくりたいなら、経営者は平時から組織にそれなりの「規範」を入れ込んでいく必要がある。
(参考:「日経ビジネス」2022年2月28日号)