このコーナーは、代表理事・牧原が読んだ本や拝聴した講演会などから、印象に残ったものをピックアップしてお届けします。古今東西の耳より情報をどうぞ受け取ってください。
直近の日本経済では円安はマイナス効果が大きい 酒井才介(みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部上席主任エコノミスト)
1.過去20年間、これほど急激に資源高と円安が同時進行した局面は見られなかった。内外金利差拡大を受けた円安と資源高が同時に進行し、両者がいずれも輸入物価の上昇要因になることで、日本の交易条件を悪化させている状況だ。筆者の独自試算によれば、円安のメリットは自動車などの一部の業種にとどまり、石油・石炭などの鉱業や食料品、素材系業種を中心に多くの業種では、輸出入取引による為替差損が発生する。
2.一般的な経済学の教科書では、円安は日本経済にプラスの影響をもたらすと説明される。日本銀行も、円安は日本経済全体にとってはプラスの効果だと説明している。しかし、直近の日本経済では円安のメリットは希薄化している。一方で、資源輸入国である日本は、資源や食料品の輸入コスト増によるマイナス影響からは避けられない。
3.ガソリンや食料品など、購入頻度の高い品目の値上げが目立つのが今回の物価上昇の特徴であり、低所得者は支出に占める日用品のウェートが大きいことから、特に打撃が大きい。今回の対策で、低所得者に的を絞った支援、あるいは価格転嫁力の小さい中小企業の資金繰り支援を迅速かつ重点に行うことが重要だろう。
(参考:「週刊ダイヤモンド」2022年5月21日号)