No.787 労働者の手取り停滞の真因は社会保険料の増大にある    小林俊介(みずほ証券チーフエコノミスト) 

 

1. 日本の労働者が豊かになれない要因を、低い労働生産性に求める言説がはびこってきた。だが、日本のマンアワー当たり労働生産性は、2000年から23年の間に16.8%改善している。つまり、生産性の改善をほぼ全て、他の要因が相殺してしまったということだ。 

2. 労働者が豊かになれなかった真因は、大きい順に、①税・社会保険料負担の増加、②交易条件の悪化、③労働分配率の停滞である。税・社会保険料負担の増加では、将来世代の再生産性を抑制してしまう現役世代の税・社会保険料負担の抑制は急務だ。 

3.交易条件の悪化は、11年の原子力発電所の停止・廃炉に伴うエネルギー自給率の低下や、研究開発費の低迷などを背景とした輸出価格の伸び悩みが原因だ。労働分配率の停滞は、株主資本主義の進展に伴い、日本経済の実力に比して株主還元への要求が過大だった結果である。健全な賃金交渉の復活により、労働分配率を維持・向上させる必要がある。

(参考:「週刊ダイヤモンド」2025 年3 月22 日号) 

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