市場介入が歪めた日本の経済構造    佐々木融(ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト) 

1.日本は1993 年から2011 年までの19 年間に76 兆円もの円売介入を行った。これが結果的に日本の経済構造を歪めてしまったということはないのだろうか。当時も「円高は投機的な動き」として、大量の円売介入で対抗した。しかし、あれだけの貿易黒字を稼ぎ出していたのだから、円高になるのは当然のことだ。 

2.それを正面から受け止め、円高でも生き残れる製造業だけが残り、そうでない企業は違うビジネスに転換していれば、もしかしたら今頃、米国のグーグル、アマゾン、ネットフリックスが提供しているサービスを日本企業が担っていたかもしれない。本来政府がやるべきだったのは、そうした変革の後押しだったのではないだろうか。しかし、変に「当局が円高を阻止してくれる」という期待感を企業に持たせたままだったので、日本は産業構造の転換に失敗し、生産性の低い国となってしまったとは考えられないだろうか。 

3.足元のように、円安を阻止しようとコントロールを続けていると、先行きの日本経済に今度はどのような歪みを与えるのだろう。そもそも円買い介入は、円安介入とは異なり、介入原資に限界があるため、円安を止められる可能性は低い。そう考えると、さらなる円安進行に備えて、本来であればビジネスモデルを考え直さなければならない輸入企業の決断を遅らせてしまうという結果になることはないだろうか。

(参考:「東洋経済」2024 年4 月20 日号) 

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